日々のアレコレ


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無題

ある冬の日、一輪の花が咲いていた。
季節外れに咲いたその花は、名前も知らない花だった。

薔薇のような鮮明な色をしていたわけでもなく、
百合のような濃厚な匂いを発していたわけでもないのに、
その花は内に秘めた情熱を感じさせるように一生懸命咲いていて、
私はそれをとても気に入った。

でもそれからしばらくして、
いつもの場所で、
いつものように咲いていたその花は、
ふと消えた。

冬に咲く花だから、きっとどこかで元気に咲いているだろう。

私はその花を忘れたことはなかった。

ある春の日、1つの種を見つけた。
その種を土に撒いたらすぐに芽が出て、
そしてあっという間に花が咲いた。
それは、名前も知らないあの花だった。

久しぶりに見るその花は、
あの日のようにひっそりと、
だけど饒舌に咲いていた。

今日は元気に咲いているね。
今日はあまり元気がないね。
でも明日は元気に咲いてね。
そしてこれから先もずっとね。

私はその花に話しかけながら、一生懸命水をあげることにした。
晴れの日も、曇りの日も、雨の日も、嵐の日も。

いくつかの季節が流れたある日。
名前も知らないその花は消えていた。

水をあげすぎたのか。
土が良くなかったのか。
毎日気にし過ぎていたのか。
枯れてしまったのか。
それとも、あの花はこの場所から離れたかったのか。

ぼんやり考えていた私に隣人が、
「さっき、あなたの花を誰かが摘んで行ったようですよ」と教えてくれた。
秋の始まりだった。

見上げた空には、満月。
月明かりに照らされた土の上には、何枚かの花びら。
心には、ぽっかり空いた花の跡。
それは、そこに花が咲いていたしるし。
名前も知らない花が残したもの。

季節の風が吹き、花びらは1枚、また1枚と、飛ばされていくのだろう。
そして私は暖かな季節が来るまでの間、
土を耕し、ぽっかり空いたしるしを埋めて、
そこにたっぷりの栄養を与えていくのだろう。

やがてその土には、
また種が落ち、
そして新しい花が咲くのだろう。
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by eicolien | 2010-11-23 23:23 | オモイ